• コラム
  • 2018.01.15

日本のスポーツレガシーについて考えてみた(その1)
東京2020から


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2018年が始まりました。新しい年を迎え、1年の計を元旦に立てた人もいるのではないかと思います。例えば、「資格試験の勉強を毎日するぞ」、「家計簿をつけて毎月貯金をするぞ」、「週末は10kmウォーキングをするぞ」など様々だと思います。ぜひ目標に向かって、毎日愉しく健康で素敵な1年を過ごしていきたいですね。

さて、先日までの年末年始には、スポーツの大会やイベントがとても多く開催されていました。休暇を利用してスタンドや体育館、競技場などに実際に出かけライブで観戦を愉しんだ人や、テレビやネット、ラジオなどの実況中継で観戦を愉しんだ人も多いのではないでしょうか。

この時期、とても寒いのですが、スポーツ界では多くのビッグマッチや興行が毎年開催されています。年末年始の休暇を取得する人が多いため、視聴率や集客を稼げることに絡み、スポンサーが付きやすいこともビッグマッチや興行のメイキングに影響を与えているかもしれませんね。

例えば、メジャーな大会として、年末には競馬の有馬記念、競輪のKEIRINグランプリ、競艇の賞金王決定戦、ボクシングの世界タイトルマッチ、格闘技のRIZIN、高校バスケットボール選手権などが開催されました。年始にはニューイヤー駅伝、箱根駅伝、天皇杯サッカー、アメフトのライスボールが開催されました。さらに年末から年始にかけては、高校サッカー選手権、高校ラグビーフットボール大会、春高バレーが開催されています。その他にも多く開催されていますので、どれか1つでも観戦した人はもの凄い人数になるのではないかと想像できます。

特に箱根駅伝は、関東地域の大学駅伝大会としての位置づけだけではなく、今やお正月の風物詩として、特に関東を中心とした地域では、観戦を愉しみにしている人が多いのではないでしょうか。

今年も厚い選手層を誇る青山学院大学が強く、東洋大学、早稲田大学、日本体育大学といった強豪校を退き、4連覇を達成しました。スポーツニュースや新聞などで結果をご覧になった方も多いと思います。視聴率は関東地域で約30%を誇り、最近5年間を確認しても関東地域では25%~30%程で安定している根強い人気の大会となっています。年々視聴率が落ち込むNHK紅白歌合戦とは逆のトレンドを描いています。

毎年、筆者は箱根駅伝の復路を沿道で観戦しますが、沿道では筆者同様に共催スポンサーである読売新聞社の旗を振って、選手に大声で声援を送る多くの老若男女を見かけます。何十万人という人数を数時間で集客できる行事・イベントという観点で考えてみても、皇族や国賓の行事を除いて、近年では箱根駅伝、大規模マラソン大会、オリンピックメダリストのパレード、プロ野球チームの優勝パレード、JRAのGⅠレース、大規模花火大会、大規模音楽フェスくらいしかないと思われます。中でもスポーツに関連した行事・イベントが多い割合となっています。

今年の箱根駅伝では、実際に沿道の観戦者の何人かと話しをしたのですが、観戦者は必ずしも出場校の在学生、OB、大学関係者だけではなく、駅伝が好き、スポーツが好き、スポーツに関与・関心がある人が観戦に来ている状況が分かりました。

挨拶周りなどで忙しい正月、しかも寒い日中に、わざわざ沿道まで観戦に訪れることは、非常に特徴的な行為に感じられ、一部とは言え深くスポーツに関心を持っている層が存在することを実感しました。

このように年末年始のスポーツの大会の盛り上がりを見聞きしたのですが、これらは一部の熱狂的なスポーツ関心層であるため、一般的な意見として生活者はスポーツに対してどのくらい関心を持っているのか考えてみたいと思いました。来年から始まる『ゴールデン・スポーツイヤーズ』を迎えるにあたり、日本は世界中から今まで以上にスポーツ分野で注目され期待を持たれます。こうした状況への対応策のヒントになるのではないかと感じたからです。

前回まで2回に渡り、耐久スポーツを始めた人が増えた経緯、ハマる経緯、そしてさらにハマると、どういった方向性に進むのかを述べてきましたが、今回はもう少し原点となるスポーツレガシーについて考えてみたいと思います。

2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の関西ワールドマスターズゲームズが開催される3年間を『ゴールデン・スポーツイヤーズ』と称しますが、そもそも一般的な生活者がスポーツに対して関心がなければ、日本全体として世界中が望むような対応は難しいと感じています。

2013年のブエノスアイレスの東京オリンピック・パラリンピック誘致プレゼンでは、「お・も・て・な・し」の心を印象的にアピールしました。しかしスポーツに関心がない場合、スポーツ分野で「お・も・て・な・し」の心は十分に表現できないと感じています。

そこで弊社が日々蓄積している不満や要望のデータベースをもとに、生活者はスポーツ関連(弊社カテゴリにおけるスポーツ・スポーツ用品)に対してどれくらい不満や要望を抱いているのか、集計を行ってみました。不満や要望を持っており、その内容について投稿を行っていることは、関与・関心が高いと考えることが出来るからです。

下記の表は、性別×年代別に弊社で設定する146区分のカテゴリにおいてスポーツカテゴリ(スポーツ・スポーツ用品)の不満や要望の投稿件数がそれぞれ何位にランキングしているのかを集計した結果です。

集計結果から、男性はどの年代もスポーツカテゴリが10位以内にランキングしており、スポーツへの関与・関心の高さを確認することができます。特に男性50代や男性10代では高い状況と言えます。逆に女性は男性よりも関与・関心が低い状況です。50代以上の高年齢層になると、自身の健康ライフとスポーツがリンクするようになり、関心・関与が他の年代よりも高くなるのではないかと考えられます。

今後は、女性を中心としたスポーツにまだ関与・関心が低い層に対し、スポーツ庁を中心した国の施策として、スポーツを「する」、「みる」、「ささえる」機会を増やしていく取り組みを推進し、スポーツへの関与・関心を高める必要があると思います。筆者はこの取り組みが、東京オリンピック・パラリンピック誘致の時に、世界が期待した「お・も・て・な・し」の心を表現する礎になるのではないかと感じているからです。

次に『ゴールデン・スポーツイヤーズ』の中で、最も大きな大会である東京オリンピック・パラリンピックに着眼して、生活者がどのような不満や要望を抱いているのか、集計をしてみました。

既に開催まで930日をきっており、また来月から平昌オリンピックが開催することも影響しているためか、昨年よりも関連情報を聞く機会が増えてきました。

今後、競技場などのインフラが整備されると、生活者の気持ちにも変化が出てくると思いますが、現時点での生活者の声を確認することは、日本のスポーツレガシーを考える上で有意義なことだと感じているからです。

集計結果から、「予算・経費などの財源問題」、「開催・運営に反対・不安・問題視」といった東京オリンピック・パラリンピックの開催そのものに直接関係する不満や要望が上位となっていることが確認できます。開催が決まってから今日までの政府と東京都の主導権争いや財源問題、東京都における都政の争いといった政治的な諸問題が表立ってしまい、こうした状況が生まれていると思われます。

またスポーツレガシーに関係する「施設・設備・インフラ」や「経済効果:地方への波及効果」についても不満や要望が高いことが確認できます。

IOCが定めるオリンピック憲章を読み解くと、オリンピックのレガシーは、オリンピック開催を契機として、社会に生み出される持続的な効果。具体的には、オリンピックの開催が決まると、開催予定都市において各種の施設やインフラの整備、スポーツ振興等が図られ、これによって生活の利便性が高まるなど、人々の暮らしにさまざまな影響が生まれることを意味しています。

現時点では、まだ好影響を感じることは出来ませんが、早急に政治的な問題を解決し、オリンピックのレガシーを適えるような日本独自のスポーツレガシーを構築していくことが、上記で述べたスポーツへの関与・関心の向上にも影響を与えていくと思います。

 予算・経費などの財源問題

  • 「ここにきて埼玉県や神奈川県などにも費用の負担問題がでてきている。ぶれにぶれまくっているとほんとうに無事に開催できるのかと思ってしまう。(30代男性 東北)」
  • 「そもそもの予算が高すぎ。まだまだ絞れる。無駄が多すぎ。民間なら考えられないレベル。(40代 男性 関西)」

 開催・運営に反対・不安・問題視

  • 「東京オリンピック開催に反対です。 全国の震災復興に力を入れてください。(50代女性 中国)」
  • 「わざわざ2回目のオリンピックを招致する必要があったのか疑問。撤回できるならしてほしいくらい。誘致した人たちは責任を感じて欲しい。(50代 男性 九州)」

 施設・設備・インフラ

  • 「新国立競技場が東京オリンピック後に球技専用となることに不満。陸上はもちろん、球技以外のスポーツ振興に貢献できるようにすべき。(40代女性 関西)」
  • 「わざわざ2回目のオリンピックを招致する必要があったのか疑問。撤回できるならしてほしいくらい。誘致した人たちは責任を感じて欲しい。(10代 女性 関東)」

 経済効果・地方への波及効果

  • 「東京オリンピックがもてはやされてるのは東京だけで地方には一切恩恵がないのが不満。地方にもオリンピックの恩恵を預かれるようにしてほしい(30代女性 中国)」
  • 「日本開催とは言っても、東京周辺(東北)にしか恩恵がない。西日本は全然盛り上がってない。(40代 女性 中部)」

ここまで日本のスポーツレガシーについて東京オリンピック・パラリンピックを中心に考えてきました。筆者は『ゴールデン・スポーツイヤーズ』を愉しみにしています。

1984年のロサンゼルスオリンピックは商業五輪の始まりと言われていますが、華やかな開会式の映像を中学1年の時にテレビで観戦しており、その記憶は今でも鮮明に残っています。東京でも記憶に残る素晴らしい大会が開催できるといいですね。

今回はここまで。次回も違った形で日本のスポーツレガシーについて考えてみたいと思います。コラムの結びに筆者の好きな言葉をお伝えして終わりにします

~「Pain is inevitable, Suffering is optional」
たとえば走っていて「ああ、きつい、もう駄目だ」と思ったとして、「きつい」というのは避けようのない事実だが、「もう駄目」かどうかはあくまで本人の裁量に委ねられていることである。村上春樹「走ることについて語るときに僕の語ること」より~

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