- コラム
- 2017.09.28
30代女性が安室ちゃんの引退を嘆く理由
2017年9月20日夜、何気なく開いたスマホから、衝撃的すぎるニュースが目に飛び込んできました。
『安室奈美恵 引退』
ショックすぎて、子供の話が耳に入らない。思考停止で家事ができない。鳴り止まないグループラインと、女友達の悲鳴…。
一晩たっても安室ちゃん引退のショックは癒されず、むしろ一層現実となって重くのしかかってきました。
私たち「不満買取センター」にも、わずか一晩で100件以上の安室ちゃん引退に関する不満が投稿されました。もちろんそのほとんどが、引退を悲しむ声です。
「青春時代から安室ちゃんの歌を聴いてきたのだが、引退してしまうのは寂しい。(35歳女性)」
「安室ちゃーーん…。なんでー…。引退しないで…。悲しい。いつまでも綺麗な安室ちゃーーん…悲しい…。(33歳女性)」
改めて、安室奈美恵とは
安室ちゃんがSUPER MONKEY’Sでメジャーデビューしたのは1992年、ソロデビューは1995年。その前後から、いわゆるJ-POP全盛期に入り、安室ちゃんをはじめ小室哲哉がプロデュースした“小室ファミリー”の楽曲がオリコンチャートの上位を埋め尽くしました。
ミニスカートや厚底ブーツ、茶髪に細眉といった彼女のファッションを真似した“アムラー”が社会現象になり、1996年の流行語大賞にも入賞しました。
その当時、私は田舎の小学~中学生、安室ちゃんファッションは真似したくても雪国では浮きまくり、物理的にも文化的にも、安室ちゃんからも流行からも遠いところで育った私ですが、それでもそのメジャー曲のほとんどを知っており、カラオケに行ったら歌い、友人の結婚式で流れる『CAN
YOU CELEBRATE?』に涙するくらいには世代であり、そのくらい一時代を築いたアーティストです。
しかし、私たち30代女子にとって、安室ちゃんの引退には「一時代を築いたアーティストの引退」以上の大きな意味があります。「もう安室ちゃんの歌が聞けなくなる…」“アムロス”なんて簡単な話ではありません。「うちらの青春が…!」なんてノスタルジーな気持ちからでもありません。
“コンテンツ”ではなく“アイコン”としての安室奈美恵
安室ちゃんのことは大好きですが、熱心なファンかと言われると自信を持って「はい」とは言えないかもしれません。近年発売された曲は知らないものも多いですし、ライブも行きたいと思ってはいたものの、その実現のために動くことはありませんでした。
それでも、たまにテレビの映像やSNSを見ては「かわいすぎる」と目と心を奪われます。やっぱり安室ちゃんに対して抱く思いには、特別なものがあった気がします。
デビュー当時からあまりにもかっこいいその姿とパフォーマンス。20歳であっさり結婚、出産する潔さ。復帰後も変わらない力強いパフォーマンスと、衰えないその美貌。
彼女と私たちが多感な10代だった1990年代は、折しも日本経済は“失われた10年”と言われる不況の最中でした。将来のことを真剣に考えていたかどうかと言われればそれもまた自信がありませんが、大人たちの中で堂々と実力を発揮し道を切り拓いていく彼女の姿は心強すぎました。大人になることも悪くないことなんだと、勇気をもらいました。私たち自身も社会に出てからは、全く衰えることのないその美貌からも、力をもらい続けました。
「こんな30歳になりたい!」 「こんな35歳になりたい!」 「こんなにかわいい40歳はいない!!!」
安室ちゃんはいつも、私たちの少しだけ先を、輝きを失わないままに進み続けてくれました。年齢を重ねることをネガティブに感じなくなったこと、不況の時代を強くたくましく生きることができたこと、そこには彼女の存在が大きくあります(もちろん、彼女のようになりたいと思ってもなれないということは百も承知ながら、それでも)。彼女は輝き続ける女性の“アイコン”なのです。数々のヒット曲のみならず、その存在自体が私たちに勇気を与えてくれるものなのです。
安室ちゃんが引退してしまい、彼女の歌が聞けなくなる、パフォーマンスが見られなくなるのはもちろん悲しいことではあります。しかし、彼女が引退するということは、それ以上に、私たちの道を指し示してくれるアイコンを失うということなのです。そういう意味で、私は安室ちゃんの引退を「アムロス」と表現されると違和感を感じてしまいます。
30代女子、迷子になる!?
彼女が果たしてきた功績は大きすぎます。彼女を失う意味も大きすぎます。
たとえ新曲を出さなくても、滅多にパフォーマンスを見ることができなくても。安室奈美恵が安室奈美恵として存在してくれていることが重要であり、大きな支えであり、指南だったことに気づきました(その存在感を保つことこそが難しいのですが。もしかしたら新曲を出すこと以上に)。
たとえ今、どんなにきれいな40代の女優やタレントが出てきても、私たちのアイコンにはなりません。どんなに歌がうまいディーバが出現しても、代わりにはなりません。
10代から、私たちと一緒に(少し先を)生きてきた彼女だからこそ、果たせることなのです。
もしかしたら、それほど騒ぐほどのことではない、と考える人もいらっしゃるかもしれません(実際、そのような不満の声も寄せられました)。しかし、人によっては、単なる「一人の歌手の引退」以上のインパクトがある出来事だということも、知っていただきたいのです。
NEVER END
これから私たちは、シンボルなき時代をどうにか生きていけるのでしょうか。引退報道から数日間、少しずつ引退の事実を受け入れようと試みましたが、まだ実感がわきません。
しかし、あの頃何も分からなかった10代だった私たちももう30代。もうとっくに、自分自身の道を進んできています。そう、安室ちゃんとこの20年を生きてきた私たち女性は、そんなに弱くないはずです。
彼女の歌自身が教えてくれます。
“Never End Never End 私たちの未来は 私たちの明日は”