• コラム
  • 2017.10.24

耐久スポーツにハマる人について考えてみた(その1)
マラソンの観点から


気づき

スポーツの秋と言われる10月となり、運動会や体育祭、各種のスポーツイベントが巷で開催される季節となりました。筆者が日頃から好んで取り組んでいるトライアスロン、マラソンといった耐久スポーツも日本ではこの10月がちょうど節目となる時期です。
トライアスロンでは、先日のお台場で開催された日本選手権やプロ、アマ問わず憧れの聖地、ハワイ島カイルア・コナで行われるアイアンマンハワイ選手権の開催で、ほぼシーズンが終わり、マラソンでは、これも先日の昭和記念公園で開催された箱根駅伝予選会から、ほぼシーズンが始まります。
テレビ番組でもこの10月に「陸王」や「赤坂5丁目ミニマラソン」が放送され、耐久スポーツへの関心の高さを感じます。

運動するには暑くもなく寒くもないこの時期、ちょっと体を動かしてみようかと考える人が多いと思います。いきなり激しいスポーツから始めると長続きしないので、ウォーキングを兼ねて川沿いや公園へ行ったり、近くの山を登ったり、街を散策するのが良いかもしれませんね。
最近、街中でカラフルなウェアに身を包んだランナーを目にする機会が増えたと思いませんか。蛍光色のTシャツやランニングタイツ、そのまま普段着にできそうなほどカッコいいウェアで運動を楽しんでいる人が増えたと感じます。スポーツメーカーだけでなく、衣料メーカーやセレクトショップ、ファストファッション企業も、このエクササイズ領域に多くの情報とトレンドを投入しているので、この勢いはますます加速すると思います。
そこで、いつから耐久スポーツをする人が増えたのだろうか、そしてハマる人が増えたのだろうか、とちょっと考えてみました。

様々な情報、いろいろな要因があると思いますが、筆者の周辺の状況からも、やはり2007年の東京マラソン開催が大きな起爆剤になったと感じています。もともと箱根駅伝や五輪、世界選手権などの国際大会で、マラソン種目に高視聴率を誇る耐久スポーツ好きの国民性があり、見て応援し感動するコンテンツから、自己体験をすることで感動するコンテンツへと、耐久スポーツを昇格させたきっかけが東京マラソンであったと思います。間接的かつ他力的な存在だった耐久スポーツを、直接的かつ自発的でより身近な存在にしたもの、さらには、感動を得るための過程、つまり完走後の感動を得るための日々の練習までを、ひとつのパッケージで楽しめるイベントとして認知させ定着させた出来事の始まりが、東京マラソンだったと感じています。
長い制限時間と魅力的なコース設定、手厚いボランティアのサポートで、ある程度の準備をすれば、参加できる受け入れやすさにより、もともとスポーツ好きな人や耐久スポーツをやっていた人だけでなく、この時期を起点に、耐久スポーツに取り組み始めた人が急増していきました。これは2007年の東京マラソン開催後の10年間で、各地にマラソン大会の開催が増え続けていることが物語っていると思います。今や、多くの都道府県で参加者が1万人規模のマラソン大会が開催されています。

耐久スポーツをする人が、自己の練習過程で得た経験、大会に参加して得た経験、それに基づく喜怒哀楽を周囲の家族や友人に伝承し、それを聞いて、ちょっと羨ましいけど自分でも出来るかもしれないと挑戦心にスイッチが入った人が、次の耐久スポーツをする人になっていく。この循環型参加ネットワークが高速に回転し、この10年間で耐久スポーツをする人(愛好家)の輪が巨大に形成されていったと思います。

このような耐久スポーツをする人を支えるスポーツ施設、スポーツ教室なども比例するように増えており、実業団や大学の体育会で耐久スポーツに取り組んでいた人たちの、セカンドキャリアになりつつあると感じています。
それでは耐久スポーツをする人の受け皿となっているスポーツの大会、特に増え続けているマラソン大会は、世間一般の生活者からどのように見られているのでしょうか。参加者、非参加者を問わず、弊社が保有する不満データベースから不満の内容を「マラソン大会」に限定して抽出を行ってみました。今後、筆者が大会に参加する際、また筆者と同様に大会に参加する耐久スポーツをする人への何かのメッセージになると思ったからです。

サンプル数が少ないため参考値となりますが、一番多い不満は、学校で行われる「マラソン大会」への不満でした。親からの投稿では子供の体調の心配や学校側への運営に関する不満、生徒からの投稿では参加したくないといった不満がありました。
一般のマラソン大会の参加に関する不満は2位以下が該当しますが、注目したいのは、交通規制についての不満でした。大規模な大会では、前日から大会当日にかけて車両通行禁止となり、地元に住む生活者の行動を制限して開催しているという事実を、参加者は認識する必要があると言えます。感謝の気持ちを持つこと、最低限ゴミの処分はしっかりとルールを守りたいところですね。
耐久スポーツをする人が増え、それに応えるように大規模大会が開催されるようになると、今まで以上に、エイドの充実、ボランティアスタッフの確保、仮設トイレ、医療スタッフの配置といった運営が必要となり、一方ではその運営に関する不満や運営を捻出するための参加費の高騰に対して不満が増えているのが現実です。
気軽に始められる耐久スポーツの拡がりに、今後影響を及ぼすかも知れない事項のため、ウォッチしてきたいと思います。

ここまで耐久スポーツを始めた人が増えた経緯、ハマる経緯を考えてみました。次は耐久スポーツを始めた人がさらにハマると、どういった方向性に進むのかを考えてみたいと思います。その内容は次回お伝えできればと思います。今回はここまで。
さあ、「書を捨てよ町に出よう」ならぬ、「ネットを閉じトレーニングに出よう」と思います。

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