• コラム
  • 2018.07.23

不満買取センターに投稿される声(その2)
Insight Eye2:2018年6月の特徴的な内容とは?


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不満

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株式会社Insight Techが運営する「不満買取センター」には、毎月20万件以上の日常生活で感じたあらゆる内容の不満が投稿されている。15文字以上で投稿するルールとなっているのだが、平均すると1投稿当たり60文字以上の内容となっており、非常に中身の濃い情報が投稿されている。
「不満買取センター」はサービス名の通り「不満」を投稿する場所ではあるが、実際の投稿は、「こうして欲しい」、「こうなるとよいだろう」といった要望や改善や提案を含んだ内容が全体の約4割を占めている。日頃、我々はこのような38万人以上の会員が投稿するデータを、言語解析し、企業や社会の課題解決に利用している。
前回から始まったこの連載では、毎月の投稿の特徴を見ながら、不満のトレンドが世の中や社会の動きと関係があるのか、季節や文化と関係があるのかに分析の視点を置き、分析結果とそこから得られた知見を紹介している。今回の2018年6月データからもたいへん興味深い結果が得られたので、以下でご紹介したい。

下のグラフは、Insight Techが独自に定めた業界カテゴリで「スポーツ・スポーツ用品」に投稿データを絞り、2018年6月に出現回数が多いトピック語として抽出された「サッカー」、「サッカー日本代表」の2ワードについて、2017年10月第1週目から2018年7月第1週目までの40週トレンドで出現回数を見た内容である。
2018年6月の「スポーツ・スポーツ用品」のトピック語は、事前に想定していたのだが、第21回FIFAワールドカップに関連する内容であった。FIFAワールドカップは、世界のトップリーグで戦うスーパースターが、自身が属する国籍のナショナルチームに戻り、国の威信と国民からの期待、個人のプライドを掛けて戦うビッグイベント、スポーツコンテンツとなっている。開催時期の前後になるとテレビやネット、スポーツ新聞などでは、代表選手、監督、対戦相手の報道が多くなり、一気に関心が高くなる。
トピック語の「サッカー」、「サッカー日本代表」の出現回数は、ワールドカップが開催される3週間前の日本代表発表の時期から徐々に増え始め、日本代表の試合が実施されるごとに急激な増加傾向となっている。最も出現回数が増えたのは、決勝トーナメント進出を決めたポーランド戦であった。このポーランド戦の出現回数は、同じく「スポーツ・スポーツ用品」で2018年2月のトピック語として抽出された平昌オリンピックに関連する「オリンピック」というワードの出現回数を上回る結果であった。
一般的にも世界最大のスポーツの祭典は視聴者数と競技人口の多さからFIFAワールドカップがオリンピックを凌いでおり、不満データの投稿からもFIFAワールドカップが平昌オリンピックを上回った。冬季オリンピックという競技人口が限られていることが影響しているのか、また日本人が好きな野球の祭典であるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)と比較するとどのような結果となるのか、興味が尽きないところである。

続いて下のグラフでは、業界カテゴリで「スポーツ・スポーツ用品」に投稿データを絞り、最も出現回数が多かったトピック語の「サッカー」というワードが含まれる投稿のみを、2018年6月第2週目から1週毎に4週間にわたってInsight Techが保有する日本語の内容をその書きぶりから感情を分類するAI技術を活用し分類した結果である。日本代表の試合が1週毎に行われた為、6月第2週目はコロンビア戦、6月第3週目はセネガル戦、6月第4週目はポーランド戦、7月第1週目はベルギー戦にそれぞれ関連した投稿者の感情を読み解くことができると思ったからだ。
感情を分類するAI技術では、「怒り」、「嫌気」、「低不満」に3分類することができ、それぞれの分析結果で「怒り+嫌気」の割合を見てみると、セネガル戦の63.1%が最も高い結果であった。これは上のグラフで確認したトピック語(サッカー、サッカー日本代表)の出現回数が最も多かったポーランド戦の60.7%よりも高い結果である。セネガル戦では、ゴールキーパーの川島選手のパンチングしたボールが相手選手の膝に当たりゴールとなってしまったプレーがあり、本来ならキャッチングするか、遠くへ弾くべきだったとミスを指摘する声が世界中のメディア、サッカー解説者からのコメントであるが、実際の投稿内容を見ても、同様の投稿が多くあり、「怒り+嫌気」の割合を押し上げた結果に繋がったようである。
不満は期待の裏返しとも言われ、そうした意味では、華麗なスルーパスを決めた柴崎選手、半端ない活躍をした大迫選手、安定的な攻撃的守備を見せた長友選手、12年以上にわたり猛者が集う日本代表の「心を整え」続けた長谷部選手といった23人の日本代表選手の中で、「不満買取センター」の投稿データからは、本来の高い技術力、スーパーセーブが見たかったというような不満交じりの期待を最も集めたのは、川島選手であったと思われる。

6月の投稿からもInsight Techの不満投稿は、世の中のニュースや話題のタイミングと関連していることが確認できた。
では、次に季節や祭事といった普遍的な出来事と不満投稿の関係を分析した結果をご紹介したい。
下のグラフは、業界カテゴリの「身体・健康」において2018年5月の出現回数が多いトピック語を月次トレンドで表示した内容である。「吐き気」、「更年期」、「バランス」、「精神的」の4ワードが5月に急激に増加していることが分かる。
5月は「環境の変化が引き起こす『五月病』」の月、また「季節の変わり目に起こる寒暖差や気圧の変動が自律神経の乱れ、カラダ・心の不調を起こしやすい」月、であることが裏付けられた結果と見ることができる。6月には例月の水準に戻っている。
季節の動き、それに伴う自然環境の変化、そうした外部的要因から受ける「身体・健康」への影響と不満の投稿は密接に関係していることが分かった。
不満の投稿には、「こうして欲しい」、「こうなるとよいだろう」といった要望や改善や提案を含んだ内容が全体の約4割を占めていることを上段でお伝えした。例えば5月の「吐き気」、「更年期」、「バランス」、「精神的」の4ワードが含まれる投稿を抽出し、その中の約4割に該当する要望や改善や提案の投稿を中心にInsight Techが保有するAI分析技術を活用することで、生活者は何を求めているのか、どのような商品やサービスがあれば満足するのか、新しい気づきやテーマに繋がる示唆を得ることで今までとは違ったマーケティング活動を実践できる可能性がある。

今回は、2018年6月にフォーカスし、時系列で投稿件数や内容を見ながら、不満のトレンドが世の中や社会の動きと関係があるのか、季節や文化と関係があるのか、この視点でデータを読み解いてみた。
次回は2018年7月の投稿から、不満の特徴とデータの見方や使い方についてお知らせしたいと考えている。夏休みも始まり、子供と過ごす時間から感じる不満、旅行先での不満、暑さや日焼けといった夏独自の不満が見られるのではないかと思っている。

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